【単身orファミリー?】空室対策に直結、賃貸併用住宅に最適な入居者ターゲットを徹底解剖

賃貸併用住宅を建てる際、賃貸スペースをどのような間取り・設備にするかは、結果、どのような入居者層が住むことになるかに直結します。ご自身が家主であれば、学生、夫婦、ファミリー、いずれの属性や年齢層の方に住んでもらいたいと考えますか?

一般的に単身者であれば、学生あるいは新社会人層で1Rや1K、収入が安定した20代半ば以降で余裕を持って暮らしたい人であれば1LDK~、夫婦2人だと2K以上、ファミリーの場合は年齢構成にもよりますが2LDK以上が検討候補にあがる間取りとなるでしょう。

もちろん完工後は簡単に仕様を変更することはできませんから、どのような層が住むことを想定して賃貸ゾーンを区切るのか、事前の入居者ターゲッティングとそれに合致したプランニングが必要となります。今回のコラムでは、賃貸スペースの「入居者ターゲット」という観点から、それぞれのメリット、デメリット、そして空室対策のための考慮すべき点をご紹介します。

※賃貸併用住宅の広義は、賃貸と自宅が併設している不動産全般です。ですが、今回は住宅ローンが使えるような自宅と賃貸部分を半分にするパターンを前提に解説します。

入居者ターゲットが単身者の場合のメリットとデメリット

メリット

  1. 戸数を増やして貸し出せば家賃収入が増える
  2. 入居者ターゲットの母集団が多い
  3. 毎シーズン一定の入居者ターゲットが存在する

デメリット

  1. 戸数が多い=管理の手間が増える
  2. 居住期間が短くなる傾向があり
  3. 入居者間のトラブルが発生する可能性が高い
  4. 建築費用が拡大する

メリット①「戸数を増やして貸し出せば家賃収入が増える」

ひとり住まいのため、1R(ワンルーム)や1K(ワンルームと独立したキッチン)という最小限かつシンプルな間取りから入居可能。細かく区切って賃貸戸数を増やせば、その分、家賃収入が期待できます。

メリット②「入居者ターゲットの母集団が多い」

立地とその周辺環境に大いに関係しますが、駅近、繁華街へのアクセスがよいなど、学生、20代社会人や単身赴任者などのひとり世帯にとって魅力的な条件が揃っていれば、それだけ入居希望者の母集団は多くなります。

また、立地にさほど優位性がなくとも、好立地物件と比較すると家賃が低め、ロフト付きで間取りに独自性がある、など、訴求ポイントを付加すれば検討候補に挙がりやすくなり、入居者ターゲットの裾野を広げることが可能です。

メリット③「毎シーズン一定の入居者ターゲットが存在する」

単身者向けであれば、大学入学や多くの会社の新年度である春を最大のピークとして、新入生や新社会人が家を探すシーズンには常に一定の入居者ターゲットが存在することになります。また、半期に一度の人事異動の時期にも需要があるでしょう。周辺に大学がある、またはその沿線上に位置する、企業オフィスが立ち並ぶビジネスエリアへのアクセスが良い、あるいは始発駅といった特徴があれば、尚更プラスに作用するはずです。

大学や企業の研究機関は地価の高い都市部を避け郊外の広い土地にキャンパスを構えることも多く、周辺エリアの特性を捉えてターゲットの絞り込みを行えば、郊外でも同様のメリットを享受できます。毎年ある時期に一定の需要があることは、空室対策としても非常に大きな利点です。

デメリット①「戸数が多い=管理の手間が増える」

賃貸戸数が増えると、当然に管理の手間がかかります。家主が不動産ビジネスを本業としていない場合、賃貸ゾーンの管理は専門の管理会社に委託することが一般的です。しかし、契約戸数が多くなれば、それぞれに入居時期・退去時期の異なる複数世帯との契約書の取り交わしや鍵の受け渡しなど、管理会社を通していてもそれなりの手間がかかることは必至です。

デメリット②「居住期間が短くなる傾向がある」

国立社会保障・人口問題研究所が行った第8回人口移動調査(2016年度)によると、25〜29歳、30〜34歳、35〜39歳の3つの年代で、他と比較して【5年前居住地と現住地が異なる人の割合】が高くなっています。また、「15〜19歳」から「20〜24歳」、「20〜24歳」から「25〜29歳」における変化が大きく、これは就学や就労の年齢と重なることから、そのタイミングで住まいの移動が多いことがわかります。(図1)

よって、20〜30代単身者ターゲットの場合、学業の修了や就労、あるいは人事異動による転勤、または結婚などのライフステージの変化から、数年での引っ越しとなる可能性が高いことがデメリットです。数年ごとに賃貸更新料を設定していれば、更新のタイミングで引っ越しの申し入れとなることもあるでしょう。退去後のクリーニングコストがその都度掛かったり、引っ越しの閑散期であれば次の入居者が入るまで空室期間が発生するなどのマイナス面があります。

5年前居住地が現住地と異なる人の割合
画像:第8回人口移動調査(2016年度)(国立社会保障・人口問題研究所)をもとに作成

デメリット③「入居者間のトラブルが発生する可能性が高い」

生活の気楽さがひとり暮らしの最大のアドバンテージ。入居者によっては、頻繁に友達を呼んで騒いだり、深夜や早朝の生活音があるかもしれません。独立した別世帯とはいえ賃貸併用住宅というひとつの建物で暮らしている入居者同士、生活リズムやマナーの認識違いからトラブルが起こる可能性はゼロではありません。

結果どちらかが退去ということになれば、空室リスクにもつながります。また、生活リズムがあまりに異なると、オーナーとしても顔を合わせることがなく、どういった人が住んでいるのかわからないという懸念も考えられます。

デメリット④「建築費用が拡大する」

戸数が増えるということは、玄関・トイレ・洗面所・キッチンなどの数も比例して増えます。つまり、建築費用やリノベーションコストが上がるということです。より大きな建物が必要になれば、それ相応の土地の広さも求められ、初期投資額が飛躍的に増える可能性があり、さらには現在の世帯年収では住宅ローンがおりない懸念もあります。

入居者ターゲットがファミリーの場合のメリットとデメリット

メリット

  1. ある程度の長期間で住む傾向がある
  2. 建築費用が膨れ上がらない
  3. 管理の手間が少ない
  4. 入居者の顔が見えやすい

デメリット

  1. 入居者ターゲットの母集団が少ない
  2. 幼い子どもがいる場合は大きな声や使用上の心配がある
  3. 退去後の一回の原状回復コストが拡大する

メリット①「ある程度の長期間で住む傾向がある」

家族世帯の場合、子どもが小学校にあがったり、一度居住して周辺との関係性が構築されると、頻繁に住み替えはせず、ある程度の長期に渡って住むことが考えられます。単身者と違い引っ越しにもそれなりの準備や費用が掛かることから、転居となる場合でも年度末や学校の学期終わり等一般的なカレンダーの区切りにそったものであることが多く、突発的なタイミングで起こることが少ない点もメリットと言えます。

メリット②「建築費用が膨れ上がらない」

自宅部分と賃貸部分の割合を50%で分ける場合、ファミリー向けのような広い間取りを何戸も用意するのは現実的ではありません。通常は、賃貸部分を自宅と似たような間取りにして、二世帯住宅に近い形にして貸し出します。

そうなると単身者向けに複数の部屋を用意するのとは異なり、キッチン・玄関・トイレなどがそれぞれ一つで足ります。すなわち、建築費用や必要な土地の広さがいたずらに膨れ上がらなくなるということです。

メリット③「管理の手間が少ない」

家族世帯が住むことを考えると、2Kや2DK以上、中学生以上の子どもがいるなど家族の年齢によっては3LDKほどが必要な間取りとなります。賃貸併用住宅のメリットを活かして住宅ローンを借り入れるため、建物の50%以上を自身の住居とした場合は、おそらく賃貸ゾーンは1戸数のみとなります。コンパクトな間取りで2戸数を検討することも不可ではないですが、キッチンや水回り、住戸間の界壁などの建築コストを考えると1戸数が現実的と考えて差し支えないでしょう。

これは単身者ターゲットのデメリットの裏返しとなりますが、複数の単身世帯が住む場合と比べ、1世帯のみの管理となればその分手間は省けることになります。入居者同士でのトラブルにもつながりません。

メリット④「入居者の顔が見えやすい」

家族で暮らしている場合は、子どもが毎日決まった時間に学校へ行く、日中の明るい時間に遊びに出ているなど規則正しい生活が予想され、その分入居者の顔が見えやすくなります。夫婦のみの世帯でも、間取り2DK以上の賃料を支払える安定した収入のある年齢層の夫婦で、どちらとも全く顔を合わさないということは滅多にないでしょう。

簡単なあいさつ程度でも声掛けできる関係性であることは、オーナーのみでなく入居者にとっても安心です。賃貸ゾーンの管理は委託会社が行うとしても、なにか困り事があればすぐとなりの大家さんに伝えられる関係であれば、入居者の懸念事項を早めに解決することにもつながります。

過去のコラム「賃貸併用住宅によくある失敗5選」でも紹介した通り、入居者との関わり合いというのはよくデメリットと捉えられがちですが、場合によってはそれを強みに変えることも可能だということです。退去の可能性を減らす、ひいては空室対策にもなるでしょう。もちろん適度な距離感を保つことを前提に、互いに接点があることを双方にとってプラスに作用させることもできます。

デメリット①「入居者ターゲットの母集団が少ない」

国土交通省の住宅市場動向調査(令和2年度)によると、過去5年にわたり賃貸住宅の居住人数は1人の割合が最も多く、単身世帯が主に賃貸物件に住まう傾向があることが分かります(図2)。特に2020年では1人または2人世帯で全体の7割を占めており、3人以上の世帯と大きな差があります。

また、賃貸に住む世帯主の年齢は30歳未満あるいは30歳代で6割をしめており、40歳代以上の割合は減っていることから、賃貸に住むのは主に20代~30代が中心であり(図3)、年齢が上がる、あるいは家族が3人以上となると賃貸住居から離れる傾向が見てとれます。最近は一生賃貸派の人が増えている背景はあるものの、ファミリー層を入居者ターゲットとした場合、現時点では単身者と比べて母集団が少ないでしょう。

賃貸住宅の一世帯あたりの居住人数
画像:国土交通省の住宅市場動向調査(令和2年度)を元に作成
賃貸住宅の世帯主の年齢
画像:国土交通省の住宅市場動向調査(令和2年度)を元に作成

デメリット②「幼い子どもがいる場合は大きな声や使用上の心配がある」

これは、オーナーとして入居希望者の家族構成を把握し納得してから契約すべきことではありますが、まだ分別のつかない遊びたい盛りの子どもがいる場合、壁や床に落書きをしたり、窓を叩いたり、大きな声を出したりすることもあるでしょう。貸し主には、借り主に住居を「使用収益させる義務(民法601条)」があり、オーナーだからと入居者の通常生活のなかで起こる生活音や行動などを制限するのは不可能なことです。

デメリット①で述べたように、賃貸に住まう世帯主は20~30歳代が多く、その年齢層で家族世帯となると小さな子どもがいる可能性が高くなります。これは、入居者ターゲットとしてファミリーを設定する場合は念頭に置いておくべき点です。

デメリット③「退去後の一回の原状回復コストが拡大する」

上記デメリット②と関連し、一概には言えませんが、汚れや破損などで修理やケアが必要になることが考えられます。賃貸物件であれば、貸し主は借り主に火災保険への加入を求めることほとんどで、たとえば子どもが遊んでいて網戸を壊してしまった、壁に大きなキズを付けてしまったなどなんらかの破損があった場合、一般には賃借人の加入している火災保険で補償することになります。

ただし、カバーされる範囲は破損箇所や加入保険ごとに違いがあるため、入居中の破損について、オーナーと入居者、どちらの保険で賄うのかを契約時に双方が確認しておくことが重要です。

また、経年変化や通常に生活している範囲での退去後の原状回復(クリーニング)はオーナー負担です。想定される利用の範囲を大幅に超えて汚れが発生した場合は借り主に原状回復の義務がありますが、就労・就学中は不在となるひとり世帯と比べると、ファミリー世帯は家での滞在時間が長くそれなりの使用感があることが予想され、退去時の原状回復においても相応のケアが必要となる可能性があります。

入居者ターゲットを取り込む差別化ポイント

ここまで入居者が単身者の場合とファミリーの場合のメリット、デメリットを見てきました。

賃料収入や生活上の懸念点など、どちらも一長一短です。いずれにせよ、想定する入居者ターゲットに実際に入居してもらうためには、検討候補にあがる魅力的な物件であることが欠かせません。空室対策にも関連する、選ばれる物件となるポイントはどのようなものでしょうか。

入居者が賃貸物件を選ぶ際のポイント

全国宅地建物取引業協会連合会の住居の居住志向及び購買等に関する意識調査(2020年度)によると、「賃貸物件を選ぶ際に重視するポイント」の上位5つは以下の通りです。

  1. 家賃(65%)
  2. 交通の利便性がよい(46%)
  3. 周辺・生活環境がよい(40%)
  4. 間取り数・間取りプラン(27%)
  5. 日当たり/住宅の向き(20%)

間取りや日当たりなどの物件情報よりも、利便性や周辺の住環境、つまり立地が重視されていることが分かります。(図4)

賃貸住宅を借りるときに重視するポイント
図3:住居の居住志向及び購買等に関する意識調査(全国宅地建物取引業協会連合会)をもとに作成(2020年調査、N=全体24863、男性15397、女性9214、3つまで選択可)

家賃に関しては怪しく思われない範囲で安ければ安い方がよいというのが入居者の共通の気持ちでしょう。ただし、立地に関してはそれぞれ定義が異なるため注意が必要です。一般的には駅近を希望する人が多いですが、そうなると家賃が上がったり部屋が狭くなったりというデメリットもあります。

さらに車で通勤をする家庭であれば駅近にこだわらない、ご老人の場合は病院近辺、子供がいる世帯は学校から遠すぎないといった様々な希望があります。”駅近”にこだわりすぎると土地や建築費用も各段に増えるため、専門家に相談しながら最適解を模索するのが得策です。

では、経済面と住環境を除き、住居の設備面に絞った選択理由ではどうかというと、上位5つは以下のとおりです。(参考:住宅市場動向調査(令和2年度)

  1. 間取り/部屋数が適当だから(63%)
  2. 住宅の広さが充分だから(54%)
  3. 住宅のデザインが気に入ったから(33%)
  4. 浴室の設備・広さが十分(29%)
  5. 台所の設備・広さが十分(27%)

つまり、「家賃が適切で、周辺の住環境がよい」ことが検討候補に挙がる第一歩で、そこで選ばれたあとに、「間取り」や「住宅のデザイン」が条件となります。賃貸物件を探している場合、まずは毎月支払い可能な金額(家賃)で最初のふるいにかけることも珍しくなく、これは当然の流れとも言えますが、その意識の流れは把握しておくべきでしょう。

全体傾向を掴んだ上で、入居者ターゲットごとの考慮すべきポイントを考えます。

図5、図6は、SUUMOリサーチセンターが2020年4月1日~2021年3月31日のあいだに新しく賃貸住居に入居した人を対象に行ったアンケート調査の結果です。これをベースに、単身者をターゲットとする場合とファミリーをターゲットとする場合の大事なポイントを押さえておきましょう。

設備に対する満足度
次に引っ越すときにほしい設備
図5、図6:2020年度賃貸契約者動向調査(首都圏)(SUUMOリサーチセンター)をもとに作成(参考値は省略)

単身者をターゲットとした場合のポイント

【設備に対する満足度】では、ひとり暮らし男性社会人で「無料インターネット」、ひとり暮らし女性社会人では「24時間出せるゴミ置き場」のほか、「独立洗面台」、「宅配ボックス」などが高いポイントを示しています。さらに、女性の場合は「オートロック」、「TVモニタ付きインターフォン」、「セキュリティシステム」、「防犯カメラ」の満足度が男性と比べて高く、防犯面での意識の違いが分かります。

【次に引っ越す際にほしい設備】としては、「エアコン付き」がいずれの層でもトップ、ひとり暮らし男性社会人の場合は「24時間出せるゴミ置き場」、「独立洗面台」と続きます。ひとり暮らし女性社会人で注目すべきは、現状設備で満足度の高い「追い焚き機能付き風呂」が低い一方、「TVモニタ付きインターフォン」、「宅配ボックス」や「オートロック」が求められており、次はよりセキュリティ面を重視する意識が見てとれます。

上記の調査は、コロナ禍以降に実施されたものです。少なからず変化した生活上の意識を反映したものと言えるでしょう。ステイホームの時間が増えたり、時間の使い方が変わったという方も少なくありません。

ひとり暮らしの社会人層にとっては、無料インターネット、エアコン、追い焚き機能付き風呂など、家で過ごす時間を充実させる要素のほか、24時間対応のゴミ置き場、不在あるいは非対面でも荷物が受け取れる宅配ボックスなど、個人の生活リズムに適応することがポイントとなっています。

また、男性と女性では家選びの際に重視する点が異なるように、ニーズを掘り下げてプランニングすることで、よりターゲット層に訴求しやすくなります。

例えば、閑静な住宅街だが周辺は防犯対策が不十分な小規模アパートのみとなれば、TV付きモニターフォン、オートロック等を導入すると、特に女性層にとって魅力となり、周辺物件との差別化につながります。賃貸併用住宅でオーナー家族がとなりに住んでいることも、プラスに作用するかもしれません。

一軒の賃貸併用住宅に複数の住人がいる場合、お互いの生活リズムがあります。単身者を入居者ターゲットとした場合、男女のカテゴリに限らず異なる個人のライフスタイルに沿う利便性の高い設備を備えることは、ターゲット層にアピールする大きな要素となるはずです。

ファミリーをターゲットとした場合のポイント

【設備に対する満足度】では、「24時間出せるゴミ置き場」、「追い焚き機能付き風呂」、「温水洗浄便座」、「ウォークインクローゼット」、「防犯カメラ」が高いポイントを示しており、全体的な設備の充実が満足度につながっている様子が見てとれます。

【次に引っ越す際にほしい設備】でも、「エアコン付き」、「独立洗面台」、「追い焚き機能付き風呂」、「TVモニタ付きインターフォン」が上位に上がっており、単身者に魅力であった通信設備やセキュリティ面に特化するより、生活上あると便利な機能を備えていることが求められていると言えます。

上述したように、住環境(立地)は家賃に次いで大きな選択理由となっており、ファミリーの場合は家の設備そのものより、公園や緑の多さ、スーパーマーケットや学校までの距離、教育環境、あるいは道路の交通量・安全面などの周辺環境をより重視することも考えられます。

郊外であれば、交通の便によっては駐車場を確保できるかどうかもポイントになるでしょう。そのほか、差別化戦略として、ファミリー向けならではの要素を付加することも一案です。

今年の3月に閣議決定された新たな住生活基本計画によると、民間賃貸住宅において、「一定の断熱性能を有し遮音対策が講じられた住宅の割合」を現在の1割から令和12年までに2割に引き上げることが掲げられました。今後は、断熱と遮音対策が賃貸住宅を建てる際のひとつの評価軸になるでしょう。

小さな子どものいる世帯では、生活音や子どもの泣き声を意識して隣家と気まずい、肩身がせまく暮らしづらい、というケースもあります。遮音性能を備えることで、20~30代の賃貸物件を検討している家族層へのアピールになるとともに、オーナーとして子育て世帯を歓迎する姿勢を見せることにもつながります。

まとめ

先ほど触れた住居の居住志向及び購買等に関する意識調査(2020年度)では、「持ち家派か賃貸派か」という問いに対し、賃貸派が25.5%と過去最高の数値になっています。

また、「住まいに対する考えに近いもの」という問いでは、「好きなときに転居しやすい住環境が良い」が全体で28.7%、年代別では20代で約43%、30代でも約39%という結果に。コロナ禍で変化した生活リズムやワークスタイルを反映し、移動の自由度を重視する姿勢の表れと言えるでしょう。

このような傾向を踏まえ、周辺環境とその特徴を見定めることがまずは第一段階です。そのうえで、短期で住み替えの可能性が高いが相対的に家賃収入が見込める単身者をターゲットとするのか、ある程度長期で住んでもらうことを想定し手間の少ない安定した運営を目指してファミリーをターゲットとするのか、双方のメリット・デメリットを考慮した上で入居者ターゲットを設定することを心がけてください。

入居者ターゲッティングとプランニングがミスマッチであれば空室リスクにもつながります。賃貸併用住宅運営の成否を決める上で、適切なターゲット層の設定は空室対策の鍵を握るとも言えるでしょう。

入居者ターゲット別のメリット・デメリットまとめ

この記事を書いた人

矢澤佑規

・1982年10月7日生まれ
・専務取締役
・建築不動産業界歴20年
・不動産賃貸オーナー
【資格】
二級建築士、宅地建物取引士